森 重隆
九州ラグビーフットボール協会 会長
日本ラグビーフットボール協会 副会長
規律のないタレント集団は、規律のあるただの人間集団に負ける
対オークランド戦への集客のヒント
2万人のサポーターをレベルファイブスタジアムに集めるためには?
― 8月の親善試合でレベルファイブスタジアムに2万人集めるためにヒントを教えていただけますか?森会長が九州ラグビーフットボール協会の会長に就任された後の日本対ウルグアイの試合で、1万2千人のサポーターが入ったと思うんですが、その時はどうされたんですか?
日本対ウルグアイの試合はラグビーで一番(観客が)入ったんだよ。
市とか県も含めて、行政からもアプローチしてくれて、商工会議所のメンバーもアプローチしてくれたというのが大きかったと思う。
― やっぱり日本代表の試合ということも動員の力になったんでしょうか?
そうそう。それもあるとは思う。
― 今回、ラグビーワールドカップ2019™の予行演習ということで市も県も協力的で、DreamRugby福岡 実行委員会はラグビーフレンドリーなメンバーで構成されているんです。先日、第二回のミーティングで田中会長から「レベルファイブスタジアムに2万人集めよう!」というお話しがありまして…。ただ、その為にどうしたらいいかという具体的な話には至っていない訳です。
う~ん。それは君たちの力でどうにかがんばりなさい!
― (笑)何か森会長からアドバイスをいただければと思いまして。
福岡内だけじゃ2万人集めるのはとても難しいから、九州一円で考えて、九州のファンの人たち全員来てもらうくらいの気持ちでやらないとね。もちろん、九州協会も協力するよ。
― 8月5日の親善試合ではオークランドの市長も来福されるんです。
それは、すごいよね。オークランドの市長も来てもらえるって。僕は森喜朗さんにもぜひ8月に来てもらいたいと思ってるよ。
行政の他には企業にも応援を頼むのもいいと思う。
― 日本対ウルグアイの時のチケットの価格はいくらに設定されたんですか?
指定席が4000~5000円だったよ。
今回のイベントの予算はどれくらいなの?
― チケット収入が2500万、協賛で2500万と見積もっています。
なるほど。これだけのメンバーであれば採算合うと思うよ。
― ラグビー関係者はどれくらい来ていただけるものですか?
僕が声をかければ来ると思うよ。興行収入だけじゃなく、見た目をバーンとしたいんでしょ?分かる分かる。
2月18日の北九州のミクニスタジアムの試合もかなり入ったもんね、1万何人か。
― 対戦カードが良かったですよね。
そうそう、サンウルブズ対トップリーグオールスターズって豪華だったね。
話変わるけど、サンウルブズは運営スタッフがすごくいい、プロ級だよ。
どうやったら儲かるか、スポーツモデルというか、マーケティングがとてもうまい。その人たち呼んで話を聞けばいい(笑)
― (笑)サンウルブズのスタッフさんですか。
この前、東京に行った時にサンウルブズのロゴマークが入ったゴルフボールをもらったよ。
そういうグッズを色々と作って、ファンの人たちに提供してうまく収益にしているみたいよ。
― なるほど~。
そこの収入とかをえらい考えてる、日本ラグビーフットボール協会もサンウルブズを見習ってそういうとこ考えなって言ってから。(笑)
― アドバイスもらいに行ったらお金取られそうですね。
あはは(笑)
例えば人を集めるってなった時、渋谷からラグビーのユニフォーム着せた女の子たちを300人、プラカードなんかも何も持たず競技場まで歩かせるんだって。
そうすると、それを見た周りの人が「なんだろう!」ってなって、写真を撮ってSNSで拡散して、それがすごい宣伝効果になるらしいよ。
― へ~!すごいですね!
人を集めるために、そういうことも考えてしてるらしいよ。
― それは渋谷だから成り立つのかなと思ってしまいましたが…。
天神とか博多駅とかですればいいじゃない!
― 西鉄バスさんにも協力してもらって、天神からレベスタまで、ラグビージャージを着た女の子たちをたくさん乗せて走る!みたいな感じですか?
そうそう!「これは何だ?」って興味を引かせるみたいな。 そういうことで人を集客するとかはどう?
― それすごくいいですね!
九州一円からサポーターが集まるモチベーションとは?
― 最初にも仰っていたように福岡だけでは2万人集客は厳しいと思うんです。九州一円から来てもらうとなると、例えば日本代表のテレビにも出てくるような選手が来るとなると集まるモチベーションも高まるかと思いますが、遠い所からでも行こうと思うモチベーションは何なのかを考えた時にまだピンと来ていないんです。
高校代表を呼んで、エキシビションマッチをするとかは?
― 僕たちも考えたんですが、夏なのでレベルファイブスタジアムが芝の関係で90分しか使用出来ないんです。
夏だから、確かにそうだね。
― 他にも、「福岡対世界」や「ワールドカップの疑似体験をしに行こう」といったキャッチフレーズを出して行こうかとも考えているんです。
うんうん、それはいいね。
それもいいし、福岡とオークランドの姉妹都市30周年というのもしっかり盛り込んで、福岡市からも協力してもらわなきゃいけないね。
― そうですね。オークランド市との姉妹都市30周年が、そもそものカードのきっかけですもんね!
そうだよ。
それに、オークランドのラグビーは強いよ、今の日本代表と同じくらい強い。
福岡の人は、ラグビーをしてる人は別として、ブルズとかチーターズとかってチーム名を言っても分からない人がほとんど。だから、試合の集客が難しい。
そこらへんを僕たちが教えていかなきゃいけない。
ラジオとかテレビを含めて、ラグビーに対してメディアがあまり興味持ってないように感じるんだよね。まずは、メディアをけしかけなきゃいけないよ。
― ラグビーをまだ知らない人をいかに巻き込むんでいけるかですもんね。
そうそう!まずは、福岡や九州の人にラグビーを知ってもらうことだよね。
強くなるために、全ては規律である。
福岡のラグビー環境の特徴と今後の課題
― 最後に福岡のラグビー環境と特徴と今後の課題を教えて下さい
皆が知っている通り、東福岡高校が全国レベルで強い。
全国的に見て福岡は一番スクールが強いというか発展している。そして、スクールで育った子たちが高校に行ってラグビーをやってるという、福岡はとても恵まれた環境にある、それをずっと維持して欲しいと思ってる。
後は、もうちょっと皆さんにラグビーに目を向けてもらえればなと。そして、それが僕らの役目でもある。
東福岡の練習はどんなことをしているのかとか知ってる?
― …あ~。
知らんのかい!(笑)
東福岡の藤田監督が話した中で一番印象に残ったのが「規律のないタレント集団は規律のあるただの人間集団に負ける」ということ。
全てが規律であると。
規律がどういうことかと言うと、挨拶であるとか、タックルバックをきれいに並べるとか、トイレを綺麗にするとかそういう本当に基本的なこと。
その基本的なことに東福岡は気がついた、帝京もそう。
― なるほど~!規律ですね。
(ただでさえ強いチームが)気がつくなよ~って(笑)
― あはは(笑)
修猷とか東筑はまだ気がついてないと思うんだよね、東福岡のような規律はまだない訳だね。
既に強いチームがそれに気づいてしまうといかんもんね(笑)
― タレント集団がそれをやってしまうみたいな!今までそういうことはなかったんですか?
あんまり無かったように思うけど、この3~4年で東福岡の中で、3年生が(細々とした)仕事をする、3年生がしているのを1・2年生が見ているから、自分たちが3年生になった時にそれをするっていう風になったみたい。
さっきも話したけど。そういう所が指導者としてとても素晴らしい。
他のラグビー指導者も藤田監督に追いつこうとしているよ。
― すごいですね~!ちなみに、8月1日からオークランドが入ってくるんですが、オークランド代表も東福岡に訪問したいみたいで、オークランド代表と東福岡との交流が出来たらと考えています。
なるほど!それはいいね。
― 今年の5月のワールドユースもオークランドの高校が来るそうなんです。そこでまた東福岡とひょっとしたら試合するかもしれないんです。その時に近隣の高校も交えて何か出来ればと。
うんうん!
― 先ほどの規律の話を聞いて、子どもに今ラグビーを教えていて本当に「それだな!」と思いました。さっき仰っていたような規律が全くないんですよ。
誰かが言ってたけど「目標は優勝すること、目的は人を育てること」って思っておかないかんって。
― なるほど。人を育てるということは本当に難しいですね。
難しいと思うよ。でも、しっかり子どもたちのためにもがんばんなさい!
― がんばります!お時間をいただきありがとうございました。